「饕餮、饕餮はおるか。」
「お傍に、我が君。」
「お主は最近、新しいカメラを手に入れたそうだな。見せよ。」
「はい。これにてございます。」
「ほう。これがα7sか……。して、何が気に入ったのじゃ?」
「はい。マウント部が金属製なところです。レンズがぐにゃぐにゃ動くのは、やはり嫌ですから。」
「……それだけではあるまい? なにか、悪行を働くつもりであろうが。」
「いえ、滅相もございません。F値が8、なんてレンズもありますから、暗い処でも大丈夫なカメラは重宝する、というだけのことでございます。」
「なるほど……。して、些細なことを訊きたいのじゃが、よいか?」
「何なりと、我が君。」
「このレンズは、なんじゃ……?」
「よくぞ訊いてくださいました。さすが我が君でございます。これこそ、伝説の『空気レンズ』なのでございます!」
「……空気レンズ?」
「はい。ライカのレンズは、その場の空気をも写しとる、という伝説がございますのはご存知かと思います。して、これこそが、その『空気レンズ』なのでございます!」
「……饕餮、お主は、そのレンズを使ってみたのか?」
「はい。昨晩、そして今朝、何百枚も。」
「……で、何か写っていたのか?」
「はい。夜の空気は黒く、朝の空気は白い、ということがわかりました。これは、世紀の大発見かと思いまする!」
「饕餮……」
「はい、我が君。」
「もう下がって宜しい。」